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ノークレームで(^∧^)、オ、ネ、ガ、イ。-ネットオークショントラブル- (FPベンゴシ)

札幌のFPを中心とした専門家ユニット なないろ福円隊のブログ

今週は、FPベンゴシでお送りいたします。

遅くなりましたが、本年もよろしくお願いいたします。

冒頭から宣伝で申し訳ないのですが、1月29日(水)午前10時にセミナーをします。

「ゾッとするスマホ・ネットの物語」です。最後に告知がありますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

ダビンチコードの著者ダン・ブラウンのラングドン教授シリーズは好きなのです。

そこで、正月休みに「インフェルノ」を読みました。

読まれた方もおられるでしょう。

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さて、1月12日の日本経済新聞で、人造肉の記事を見ました。

1つのハンバーガーの肉を作るのに、昨年の夏には約3500万円かかったそうです。

それが、今や量産すれば1000円未満になるところまできたそうです。

 

それでも高いじゃん!って思いますでしょ。それなのに、なんで、そんなもの作っているのか?

記事は、その後こんな風に続いていました。

食肉需要は2040年に約5億トン

水産資源の枯渇

国連食糧農業機関によると世界の穀物生産量は年間約20億トン。

世界人口が100億人に近づく50年代にはそのすべてが食用でも賄えない(ということは、家畜の飼料も足りないってこと。)。

 

そんなもんですから、昆虫を食用にする取り組みが注目されている、という別の記事もありました。

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さて、なんで、こんな話しを挟んだかというと、「インフェルノ」にも、人口増加問題が絡んでいたからなんですね~

(ネタバレすみません。タイトルにきさいしたとおり、ノークレームでお願いします。)。

 

さて、最近相談受けたんで、今回は、ネットオークションの『ノークレーム・ノーリターン』に対抗できないのか?について書きたいと思います。

私も、ネットオークションは利用します。

買うときもありますし、売ったこともあります。

 

その際、お目にかかるのが、この言葉。

『中古品ですのでノークレーム・ノーリターンでお願いします』

 

届いた品が、故障品だったり、記載からは予想ができないような傷がある物だった、という場合、果たして文句は言えないのでしょうか。

すみません。そんな話はいいですね。

 

さて、元に戻ります。

実は民法上、ノークレーム・ノーリターンという契約は、可能でして、一応有効です。

 

しかし、この問題を考えるに際しては、オークションの売買対象となった商品の性質から考えないといけません。

面倒ですが、お付き合いください。

 

売買の対象物には、二つの種類があります。

ひとつは、特定物、もう一つは、不特定物です。

 

 不特定物って、代替品があるものです。つまり、大量生産されている新品の製品です。たとえば、新品のニンテンドーDSとかです。

 

特定物ってなにかといいますと、代替品がないものです。

この世に一つしかない物です。たとえば、特別仕様の特注品とか油絵です。

中古品もそうです。

厳密に、よくよく考えてみますと、中古品って、全く同じものってないでしょ?

同じ場所に同じ深さと幅の傷があるとか、全く同じ使用時間であるとか、全く同じ汚れ方だとか、全く同じ日焼けだとか、使われ方が違う以上、同じものではないでしょ。もちろん、近い状態のものは探せばあるけど、同じではないですよね。

ですから、大量生産されている商品であっても、中古になってしまうと、この世に一つしかないと考えます。

 

 

 

そこで、まず、オークションで購入したものが新品で「不特定物」の場合、

それに問題があれば、『代わりの新品をよこせ』と請求できます。

これは、ノークレーム・ノーリターン特約の有無に関係ありません。

この場合、そもそも、約束した物が引き渡されていない、と考えるからです。

 

これに対し、中古品などの「特定物」の場合は違うのです。これは、この世に一つしかない物です。

そのため、約束した状態とは違っていても、ともかくもそれを引き渡してしまえば、引き渡し義務は果たした、といえるのです。

そう。そのとおり。不公平です。

そこで、民法は、この不公平を是正する制度を設けています。

570条の瑕疵(かし)担保責任です。

570条は、売買した特定物に、隠れた傷がある場合には、金銭賠償又は契約の解除ができると規定しています。

ちなみに「傷」のことを法律用語で「瑕疵」(かし)と言います(たまに新聞とかでもみますね)。

ところで、「隠れた瑕疵」とは、通常の注意力を払って発見できないような傷のことです。

ネットオークションの場合は、パソコン画面上で、製品の説明や写真を見るしかないので、説明書きにない、また写真等からは知り得ない傷は、この「隠れた瑕疵」に該当します。

 

さて、この瑕疵担保責任、これは、当事者間の特約で排除できます。

ここで、『ノークレーム・ノーリターン特約』が問題となってきます。

 

この『ノークレーム・ノーリターン特約』は、瑕疵担保責任を排除する特約といえるのです。

ですから、『ノークレーム・ノーリターン』と表示のあるオークションの場合、この特約は有効で

瑕疵担保責任を追及できない、つまり、金銭賠償や契約解除はできない、ということになるのです。

 

しかし、ここにも一定の救済があります。民法572条です。

民法572条では、そもそも売主がこの瑕疵(傷)の存在を知っていた場合には、瑕疵担保責任を排除する特約はできない、ということになっています。

まとめます。

そこで、問題は、「売主がその商品の傷を知っていたかどうか?」ということになります。

 

これは、具体的な事情によります。

たいてい、オークション出品者である売主は、「そんな傷は知らなかった」というでしょう。

ですから、傷を知っていたことを直接立証することは困難と思われます。

 

そこで、状況証拠から、売主は知っていたはず、という立証をすることになります。

 

一番重要な状況証拠は、その「傷」そのものがどこにあり、どのような傷か、だと思います。

オークション価格に大きな影響をあたえるような製品の重要な部分に傷がある場合、をそれを知らなかったというのは、なかなか通りにくいでしょう。

そのような部分については、おそらく商品説明でも触れているはずですから。

たとえば、ゲームとか電子機器で、そもそも動かない、音が出ない、というような場合には、それを知らなかったってことはあまりないでしょう。

ふつう、説明に「中古ですが通常どおり作動します」とか書いてあるはず。

この説明からは、作動するかどうかを確認しているはずで、これが作動しない、となれば、作動しないことを知っていた、ということになるでしょう。

 

他方、売主が転売者の場合、その商品を購入時にどのような説明を受けたか、購入後商品確認状況などによっては、本当に傷を知らなかった、という場合も結構あるでしょう。

 

なお、説明と商品の状態があまりにも異なる場合には、そもそも「詐欺」として、民法96条によって契約の取消も可能です。これはノークレーム・ノーリターン特約の有無に関係なくできます。

 

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以上のように、ノークレーム・ノーリターン特約は原則有効です。

そして、売主が傷自体を知っていた場合には、その特約が無効となる、ということです。

売り主が知っていたことの立証が必要なことを考えると、責任追及のハードルは結構高いです。

全く、おっしゃるとおりでして、

さらに、救済の道はあり得ます。

今までの話しは、「消費者」対「消費者」の取引の話しなのです。

 

実は、売主が「事業者」で、買主が「消費者」の場合、そもそも、消費者契約8条1項5号によって、『ノークレーム・ノーリターン特約』によって損害賠償責任を全部免除することはできないのです。

ですから、売主が事業者の場合、ノークレーム・ノーリターン特約があっても、損害賠償請求はできます。

 

また、消費者契約法には、ノークレーム・ノーリターン特約に関係なく、契約を取り消す事ができる場合が規定されています(消費者契約法4条)。

ひとつは、事業者が、重要事項について不実の告知をした場合です(消費者契約法4条1項1号)。

不実の告知とは、簡単に言えば、客観的な事実と異なることを告げたこと、です。

事業者が事実と異なる事を知っている必要はなく、客観的に、告知事項と事実が異なっていれば良いのです。

 

ですから、商品の重要部分について説明と異なる場合には、取消ができます。

 

二つ目は、事業者が、重要事項について、消費者に不利な事実を知っていたのに告げなかった場合です。

この場合も取消ができます(消費者契約法4条2項)。

 

このように、出品者が事業者である場合には、ノークレーム・ノーリターン特約問題はほとんどクリアーできます。

そして、事業者の場合は、特定商取引法によって、事業者の住所等の表示が義務づけられています。

ですから、通常は、連絡を取ることも比較的容易といえます。

 

ちなみに、個人であっても、オークション販売を反復継続して行っているような場合には、消費者契約法の「事業者」に該当します。

必ずしも、法人である等の必要はありません。

これに対し、出品者が事業者ではない場合には、消費者契約法の適用はありません。

ですから、最初に述べたように、ノークレーム・ノーリターン特約は原則有効で、出品者が傷について知っている場合に特約を排除できることと、詐欺等の可能性を検討する必要があり、結構しんどいです。

 

また相手方の住所等を確実に把握できない可能性もあります。

 

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そこで、相手方が事業者といえないような場合で、ノークレーム・ノーリターン特約がある場合のオークションには、よく質問をするなど慎重に取引しましょう。

すみません・・・・

確かに今日は長すぎました。

 

しかし、ノークレームでお願いいたします。

 

 

 

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 福円隊セミナーのお知らせです。

講師 FPベンゴシ・松下 孝広

  (弁護士・1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP)

とき 2014年1月29日(水)

   10時00分~11時45分(開場9時45分)

場所  札幌市男女共同参画センター(札幌エルプラザ)

      4階 研修室4

     札幌市北区北8条西3丁目

料金 2,000円  

   ※マネーバランス会員様は1500円 (総合相談をしている方)

お申し込み方法

  下記のお申込みフォームに必要事項を記載の上,ご送信下さい。

お申込みはコチラから

==============参考条文======================

消費者契約法4条(消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の取消し)

1項 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。  

一 重要事項について事実と異なることを告げること。      当該告げられた内容が事実であるとの誤認

二  物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。     当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認

2項 消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対してある重要事項又は当該重要事項に関連する事項について当該消費者の利益となる旨を告げ、かつ、当該重要事項について当該消費者の不利益となる事実(当該告知により当該事実が存在しないと消費者が通常考えるべきものに限る。)を故意に告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。ただし、当該事業者が当該消費者に対し当該事実を告げようとしたにもかかわらず、当該消費者がこれを拒んだときは、この限りでない。

3項(略)

4項 第一項第一号及び第二項の「重要事項」とは、消費者契約に係る次に掲げる事項であって消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきものをいう。

  一 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容

  二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの対価その他の取引条件

5項(略)

 

消費者契約法第8条 (事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効)

1項 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

一  事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項

二  事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項

三  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の全部を免除する条項

四  消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する民法 の規定による責任の一部を免除する条項

五  消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的物に瑕疵があるとき。次項において同じ。)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項

2項  前項第五号に掲げる条項については、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。

一  当該消費者契約において、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該事業者が瑕疵のない物をもってこれに代える責任又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合

二  当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、当該消費者契約の目的物に隠れた瑕疵があるときに、当該他の事業者が、当該瑕疵により当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、瑕疵のない物をもってこれに代える責任を負い、又は当該瑕疵を修補する責任を負うこととされている場合